山背古道探検隊・山背人・中村吉三の巻 

「第五回 木津の田園画家」
中村吉三(なかむらきちぞう)さん

 今回、紹介するのは、山背サロンでいつも多くの意見をいただき、探検隊の皆さんにもお馴染みの中村吉三さん。
 

●多くの教え子に慕われる先生
 元木津町教育長で、長年、山城地域の小・中学校の教鞭に携わられ、地域を見つめられておられますが、さすがは知識人、先ず、その趣味の幅の広いことに驚かされます。

 ご自宅を伺うと、玄関を入ったとたん、数年前に改修されたと云われる吹抜けの土間。

 そこには自作の陶芸作品と、自筆の書が飾られており、いかにも趣味人の家って感じが醸し出されています。

 近年始められた陶芸教室で、知り合われた学研地域に住まいの研究者や外国の方との交流を深められ、教え子を始め地域の人気の的の方です。

 これだけそろえば十分すぎるほどの紳士でありますが、今回ご紹介したいのは、中村さんの描かれる絵を通しての地域への思いです。

●季節感あふれる木津川沿いの原風景
 20代から始められた絵は、もはやプロ顔負け、現在(平成9年7月現在)、南都銀行木津支店で個展が開催されていますので、探検隊の皆さんもご覧あれ。(平成9年7月で終了しました。)

 画の対象として山背古道は如何でしょうかの問いに、「山背古道は十分画になります。私にとって山城の地の風景画は、イメージで描くのでなく、現地へ赴き、そのときの季節を感じ取らなければ描けません。その点で山城地域は自然と人々の生活が溢れピッタリ、普段住んでいる土地も少し視点が変わるだけで新たな発見があります。」との回答。

 中村先生の山城の自然や住む人の生活を愛しむ気持ちが伝わってきます。

 中でも、先生お気に入りの一枚は、現在、展覧中の『児童公園の無名の一本木』。
「児童公園にある一本の木は、取立てて特徴のある木では無いのに、子供たちや若者に愛され、夏の木陰での避暑やかくれんぼなど、木の下には必ず人がいる。私もそのように人に頼られるようになれればと考えています。」

 いかにも中村先生の人柄が現れております。

 その若さの秘訣は?

 「陶芸は、当初1クルーのつもりで自転車で通った京田辺市での教室が、今や百回を越え、天気のいい日は写生へ、孫と一緒に自転車で嵐山や、琵琶湖一周もしました。」

 どうやら先生の活気の源はその好奇心と自転車出にあるようです。

●肩を張らない無理のない長い活動を
 最後に山背古道について一言。

 「嬉しいことに、探検隊発足から地域を訪れる遠方の方が増えたように感じます。地域には数多くのプロ級の歴史家、芸術家が住まわれており今後も、その人たちが地域の人の牽引として山背古道に参画されることを期待しております。また山城の地には歌姫街道や城陽から宇治へと繋がる街道筋、平城山など自然・文化・歴史に充ちており、今後も一層広域的な取り組みと人のネットワークが発展することを望んでおります。多くの人のアイデアを集め、派手さは無くても地道な活動がされれば最高なのでは。」

 中村先生の笑顔に溢れた話を聞いた後、水彩画や焼き物を観ていると、やはり人柄や生活が作品にも現れていることに納得します。

 探検隊員の先達として、そのほれぼれするほどの関心の広さや、魅力的なスタイルを恨めしく思ったのは私だけでしょうか。(も)  

一本松(一里塚)  歌姫街道沿い:秋
田園風景と旅人を見続けてきた歌姫街道の一里塚

「木津町・加茂町・山城町」は平成19年3月12日に合併し「木津川市」となりました。

前の山背人

準備中

山背古道探検隊・山背人・中村吉三の巻 '98.8掲載